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雪道に強い4WDシステムとは

Issued on Jan. 22, 2017
Added on Dec. 3, 2017
Added on Aug. 2, 2018

目次



  1) はじめに
 ▼2) ディファレンシャルの機能
  3) 4輪直結パーマネント4WD
  4) 前後輪直結パーマネント4WD
 ▼5) パートタイム4WD
  6) パッシブ・オンデマンド4WD
 ▼7) アクティブ・オンデマンド4WD
 ▼8) メカ式フルタイム4WD
 ▼9) 電子制御フルタイム4WD
  10) まとめ(雪道に強い4WDシステムのランク表)

5) パートタイム4WD


パートタイム4WDとは、前述の前後輪直結パーマネント4WDのセンターシャフトに手動切り替え式のクラッチを設けたクルマです。


パートタイム4WD

このクラッチを手動で切り替える事によって、2輪駆動になったり前後輪直結4WDになったりします。

ですので、舗装道路では2輪駆動にする事でタイトコーナーブレーキング現象を防げますし、雪道では前後輪直結4WDとなり、ようやく実用的なクルマになったと言えます。

このパートタイム4WDにおいても、いくつかの種類が存在します。


5-1) 元祖パートタイム4WD

この手の4WDは、初期のジープからそれを模した初期のランドクルーザやサファリ、乗用車スタイルのスバルレオーネ、旧ジムニーなどに見られます。


パートタイム4WDの旧ジムニー(レベル3

なお雪道の走破性については、前後輪直結パーマネント4WDと同じなのですが、それより遥かに現実的なので取り合えずレベル3としておきます。

ジムニーと聞くと、雪道にはめっぽう強いという印象がありますが、残念ながら前後輪はオープンデフのままですし、おまけにタイヤの接地面も広い(詳細はこちらへ)ので、雪道にはそれほど強くはありません。

またジムニーには、オプションで後輪用のLSDがあるのですが、これも空転時には反対側のタイヤに駆動を伝えられないので、雪道には全く以て役立たずです。


雪道では殆ど役に立たないジムニーのオプションLSD

確かに二輪駆動車と比べれば雪道でのアドバンテージはあるのですが、なぜこんなにも雪道に強いという印象が広まっているのか不思議でしょうがありません。

雪道で何とかまともに走れる様になったのは、新型からです。


5-2) 片輪デフロック機構付きパートタイム4WD

ご存じないかもしれませんが、ダイハツの軽商用車であるハイゼットカーゴや軽トラックのハイゼットトラック、或いはスズキの軽商用車であるエブリーや軽トラックのキャリーもこのパートタイム4WDを採用しています。


後輪にデフロック機構を備えたダイハツ・ハイゼット・トラック(レベル5

おまけにいずれの軽トラックにも、後輪にデフロック機構まで奢(おご)っていますので、滑りやすい雪道に限って言えば、旧ジムニーよりも間違いなく雪道の走破性は高いと言えます。


ダイハツ・ハイゼット・トラックのスーパーデフロックの説明

ただし前輪にはデフロック機構がありませんので、もし前輪の一方が空転すれば、2WDの後輪駆動車になってしまいます。

ところで、競合メーカーであるダイハツ(上)とスズキ(下)で、デフロック効果を示すイラストが非常に似かよっているのはどうしてでしょう?


スズキ・キャリーのデフロックの説明

それはともかく、後輪にデフロック機構の付いているパートタイム4WD(ハイゼットトラック)の雪道走破性は、ジムニーより上のレベル5といしたいと思います。


5-3) 前後輪デフロック付きパートタイム4WD

また一時期復刻版として再販されたランドクルーザー70は、オプションながら前輪と後輪を電動でデフロックが可能です。


電動デフロック(前後)をオプション設定したランドクルーザー70バン(レベル9 or 3

この場合は一気にレベル9とパートタイム4WDを搭載した量産車クラスにおいては上級クラスに格上げしたいと思いますが、時速8km以下の走行しかできないのが寂しい所です

ただしオプションのデフロック機構を持たないランドクルーザー70は、旧ジムニーと同じレベル3になります。



5-4) 簡易LSD付きパートタイム4WD

またジープのラングラーもコマンド・トラックと呼ばれるパートタイム4WDを採用しているのですが、これにはもう一つのアドバンテージがあります。


ジープのラングラー(レベル8

それはクライスラーでブレーキ・ロック・ディファレンシャルと呼ぶ機能で、万一車輪が空転したらその車輪にだけブレーキを掛けて、反対側の車輪に駆動力を与える簡易LSD(リミテッド・スリップ・デフ)です。

以前お伝えした、スリップしたら軽くブレーキを踏むというのを、自動で且つ空転しているタイヤにのみ行っているという訳です。

また最近復活したハイラックスも、同じ様なシステムを採用しています。


2017/9に復活したパートタイム4WDを搭載したトヨタ・ハイラックス(レベル8)

そしてようやくと言っても良いでしょう。

2018/7にフルモデルチェンジした新型ジムニーにおいても、ようやくブレーキLSDトラクションコントロールと呼ぶ簡易LSDを搭載しました。


ようやく簡易LSDを搭載した新型ジムニー(レベル8)


新型ジムニーに搭載された簡易LSDの説明図

これによって、雪道では4輪直結4WDに近い走破性が期待できますので、これについてもレベル8にしたいと思います。


5-5) 4輪の駆動抵抗について

ところで、パートタイム4WDの場合、2輪駆動にすると、4輪駆動で走行するより駆動抵抗が減って燃費が良くなると言われています。

ですが、本当でしょうか?


パートタイム4WD

上の図を再度ご覧頂く様に、例えセンターシャフトのクラッチが切れて2輪駆動になったとしても、タイヤが回れば全てのディファレンシャルもドライブシャフトも回転しますので、駆動抵抗は全く減りません。

このため、もし2輪駆動時に駆動抵抗を減らしたいのならば、昔のスズキジムニーに付いている様なフリーホイールハブをOFF(FREE)にしなければなりません。


ジムニーの前輪に付いているフリーホイールハブ

このハブをFREEにすれば、タイヤとシャフトの駆動が完全に断たれますので、タイヤが回っても前輪のシャフトもディファレンシャルも回りません。

ついでにお伝えしておきますと、ややこしいのがランドクルーザー70の前輪に付いているハブです。



ランドクルーザー70のデュアルモードオートマチックロッキングハブ

これには、ジムニーのハブにあるFREEの代わりにAUTOなる指標が付いています。

これはトヨタが、デュアルモードオートマチックロッキングハブと呼ぶ機構で、AUTOにしておけば2WD時は前輪がフリーになり、4WDにすると自動的に前輪のハブがロックされるという優れものです。
だったら何故LOCKがあるかと言えば、下の取り扱い説明書にあります様に2WD時にもハブをロックさせて(多少燃費が悪くなってでも)前輪のシャフトやデファレンシャルを駆動させてオイルを循環させるための様です。


ランドクルーザー70の取扱説明書の抜粋

都会で大型の4輪駆動車を維持するには、取扱説明書とも格闘する必要がありそうです。


5-6) パートタイム4WDの注意事項

ところでパートタイム4WDのセンターデフをロックして前後輪直結4WDにした場合、全てのタイヤが同じ速度で回転していれば良いのですが、(前後輪に回転速度差が生じるカーブは当然として)タイヤの外形の違いで、少しでも各タイヤの回転速度が異なると、路面との擦れ現象が発生し、タイヤが早く摩耗すると共に、燃費が悪化する事になります。

このため、全てのタイヤを同じ条件にしておく事が必要です。

いずれにしろこのセンターデフの無い4WDシステムにおいては、センタークラッチをON(センターシャフトを直結)したまま舗装路を走るのは厳禁です。

本書を読んで頂いたついでに、是非覚えておいてください。





5) パートタイム4WD

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4) 前後輪直結パーマネント4WD
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6) パッシブ・オンデマンド4WD



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