排気音と気筒数と回転数の関係
(エキゾーストノートを聴いて気筒数が分かるのか?)

Issued on November 2017
  1. はじめに
  2. エンジン内の爆発回数
  3. 音とは何か
  4. 爆発回数と排気音の周波数との関係
  5. 気筒数と排気音の周波数との関係
  6. 考察
  7. 排気音で奏でるドレミの音階
  8. まとめ


1. はじめに

本サイトでは以前より、エンジンの排気音を聴いただけで気筒数など分からないと主張していたのですが、読者の方より気筒数が増えれば排気音は高くなる筈だ、との鋭いご指摘を頂きました。

全くもってその通りです。

ですが、それで気筒数を推測できるかと言えば、そう簡単でもありません。

何故ならば、気筒数だけではなく、回転数が上がっても排気音は高くなるからです。

実際F1レースを見ると、とんでもなく甲高い爆音をまき散らしながら、F1カーがスタンド前を駆け抜けていきます。


F1カーのエンジン音は甲高い

これは時速300km以上で疾走する事によるドップラー効果の影響(停止時と比べると、時速300kmで近づいてくると周波数が30%以上もアップする)もあるのですが、何か特別なマフラーを使っているわけではなく、現在のF1カーが採用している6気筒エンジンでも、回転数が1万5千回転近くになると甲高い音が発生するからです。

となるとです。

エンジンの気筒数が増えると、排気音はどれくらい高くなるのでしょうか?

そして、エンジンの回転数を上げた場合と、どれくらい違いがあるのでしょうか?

それを数値やグラフで比べたくはなりませんか?

その上で、はたしてエンジンの排気音を聴くだけで、気筒数を推測する事が可能なのかどうかについて、決着を付けたいと思います。

従来この様な視点でつっこんだ記事は無かったと思いますので、もしかしたら楽しんで頂けるかもしれません。


2. エンジン内の爆発回数


さて、気筒数と排気音の関係を定量的(数値的)に、且つ定性的(官能的)に調べるにはどうすれば良いのでしょうか。

もしかしたら気筒数の異なるクルマを数台用意して、排気音をスペクトラムアナライザーを使って周波数回析するとかPCでフーリエ回析して、並行してパネラー数人による官能評価を行なうなどと思われていないでしょうか?


レクサスLFA(10気筒)の排気音はどれくらい甲高いのか?

とんでもありません。

弱小サイトに、そんな時間もお金もありません。

ですが、排気音の周波数など、紙と鉛筆だけで簡単に計算で求められますし、周波数も音階にすれば人が識別可能かどうかも凡(おおよ)そ判断できます。

物事の本質を知ってしまえば、世の中は非常に単純なのです。

物事の本質を知らないから、難しいと思うのです。

と、偉そうな事を言ってしまいましたが、早速排気音の周波数を計算してみましょう。

理由は後程ご説明するとして、先ずは1秒間のエンジン内の爆発回数を求めてみます。

例えば4気筒エンジンが3000rpmで回転している場合、1秒間のエンジン内の爆発回数は以下の式で求められます。

1秒間の爆発回数=
エンジン回転数÷60秒÷2回転×気筒数
3000rpm÷60秒÷2回転×4気筒
100回

ここで回転数を60秒で割っているのは、エンジンの回転数の単位であるrpm(rotation par minutes)とは1分間の回転数を表しているため、それを1秒間の回転数にするためです。


一部のネット記事にrpmを”revolution per minute”と記述している事がありますが、これは明らかに間違いです。

地球の自転(rotation)と公転(revolution)

revolutionとは公転を表しており、物体の外側に回転中心があり、物体の内側に回転中心のある自転(rotation)より、もっと大きな回転を指します。

このためrevolutionには革命とか革新という意味があり、1分間に数千回も革命など起きるか訳がありません。

本来の意味を知っている英語圏の人は、そんな間違いをする事はないのでしょうが、日本人だとrotationもrevolutionも似た様に思うのかもしれません。

なお本来回転数のSI単位は1/s(1/秒)なのですが、ここでは分かり易くrpmのままにしています。

次にそれを2回転で割っているのは、4サイクルエンジンの場合、エンジンのクランクシャフトが2回転する間に1回しか爆発しないからです。


4サイクルエンジンの場合、クランクシャフトが2回転する間に1回爆発する

ちなみに、排ガス規制で今では殆ど見る事のなくたった2サイクルエンジンは、1回転で1回爆発します。

そして最後に気筒数を掛ければ、そのエンジンの1秒間当たりの爆発回数が求められるという訳です。

それを異なる気筒数と回転数で計算した結果が、以下の表になります。

回転数
(rpm)
エンジン内部の爆発回数
3気筒 4気筒 6気筒 8気筒 12気筒
1000 25 33 50 67 100
2000 50 67 100 133 200
3000 75 100 150 200 300
4000 100 133 200 267 400
5000 125 167 250 333 500
6000 150 200 300 400 600
7000 175 233 350 467 700
8000 200 267 400 533 800
9000 225 300 450 600 900
10000 250 333 500 667 1000
エンジンの気筒数と各回転数における1秒間の爆発回数

これをご覧頂きます様に、例えば3気筒エンジンの場合、1秒間に200回爆発させるには8000回転まで回す必要がありますが、6気筒エンジンの場合は4000回転、12気筒エンジンの場合はたったの2000回転で200回爆発させる事ができるのが分かります。


3. 音とは何か


1秒間当たりの爆発回数が分かった所で、次は音について考えてみましょう。

音とは、言うまでもなく空気の振動です。

人の声にしろ、スピーカーにしろ、空気を振動させる事により音が発生します。

もう少し難しい単語を使うと、人の喉でもスピーカーでも、それが前後に振動して気圧の差を生じさせる事で音が出ます。

小さなスピーカーを見ても分かりませんが、ダンスホールにある様な大きなスピーカーの表面を良く見ると、前後に振動している事が分かります。


スピーカー表面を良く見ると、前後に細かく振動している事が分かる

そしてその振動の周期が、音の周波数になります。


空気が疎/密になると気圧差が生じて音が発生する

上の絵で言えば、空気が密の所がスピーカー表面が出っ張って気圧が高い箇所で、疎の所がスピーカー表面がへこんで、気圧が低い箇所です。

そして、音の周波数とは、1秒間当たりの空気(気圧)の粗密の数になります。

ですので、例えば周波数30Hzの音とは、この山から山の数が1秒間に30個ある事になります。

センターコーン

ところで、スピーカーについて話をしたので、この話もついでにしておきましょう。

スピーカーを見ると、中央部にドーム状の出っ張りがあります。


スピーカーのセンターコーン

これはセンターコーンと呼ばれるのですが、じっくり見ても振動している様にはみえません。

では、どんな機能があるのでしょうか?

細かく見れば、周囲のスピーカーの振動音を周りに拡散する機能もあるかもしれませんが、実質的には中央部の穴を隠すためのカバーの機能しかないのです。

ですので、へこんだり、破れたりしても再生音には殆ど影響しないのです。




4. 爆発回数と排気音の周波数との関係


オッと、また話が逸れてしまいましたが、それではエンジンの爆発回数と排気音の周波数との関係について考えてみたいと思います。

当然ながらエンジンの内部で爆発が起きれば、排気管からは膨張した空気が放出され気圧が高くなります。


排気管からは膨張と収縮を繰り返した排気ガスが排出される

そして次の爆発までの間は、周囲の影響により気圧が低くなります。

という事は、先ほどの図において、空気が密の所が爆発のときで、疎の所が爆発と爆発の間と言えます。

すなわち、爆発から次の爆発までの間が、音(正確には音波)の1周期になりますので、1秒間の爆発回数が排気音の周波数になると考えられます。

ですので、仮に1秒間に200回爆発するエンジンがあるとしたら、その排気音の周波数は200Hzになるという訳です。


5. 気筒数と排気音の周波数との関係


ここまで分かれば、もう簡単でしょう。

前述の”エンジンの気筒数と各回転数における1秒間の爆発回数”の表は、項目と単位を変更する事によって、以下の様に”エンジンの気筒数と各回転数における排気音の周波数”の表に置きかえられるという訳です。

回転数
(rpm)
排気音の周波数(Hz)
3気筒 4気筒 6気筒 8気筒 12気筒
1000 25 33 50 67 100
2000 50 67 100 133 200
3000 75 100 150 200 300
4000 100 133 200 267 400
5000 125 167 250 333 500
6000 150 200 300 400 600
7000 175 233 350 467 700
8000 200 267 400 533 800
9000 225 300 450 600 900
10000 250 333 500 667 1000
エンジンの気筒数と各回転数における排気音の周波数

上の表をご覧頂きます様に、仮に3000回転で比較すると、3気筒エンジンにおける排気音は75Hzで、8気筒エンジンは200Hzになりますので、周波数で2.7倍も異なります。

またご存じかもしれませんが、周波数が2倍になると、音階で1オクターブ異なります。

ちなみに1オクターブとは、ドレミのドからシまでの音階になります。


ですので、周波数で2.7倍異なるという事は、1.4(=Log2 2.7)オクターブ異なりますので、恐らくどんなに音痴な方でも聞き分ける事ができるでしょう。

だったら、排気音を聴けば気筒数が分かるのでしょうか?

という訳で、次に進みます。


6. 考察


下のチャートは、音の周波数を1オクターブ間隔の対数グラフにして、尚且つ音の周波数の目安を書き込んだものです。


そして右下の縦棒は、3気筒から12気筒エンジンまでの、低回転から高回転まで回した場合における排気音の周波数帯域を表しています。

先ほどはいきなり3気筒と8気筒を比較してみましたが、ここではこの縦棒を見ながらもう少しじっくり見ていきたいと思います。

先ず1000回転時の3気筒と4気筒を比較すると、その周波数の差は1.3倍(=33/25)で、音階の差は0.4(=Log2 1.3)オクターブですので、ドレミのドとファの差でしかありません。

ピアノのドとファを聴けば違いが分かるでしょうが、相手は色々な雑音が混ざった排気音ですので、仮に2台のクルマを同じエンジン回転数にして聴き比べても、恐らく違いは分からないでしょう。

次に4気筒と6気筒を比べてみます。

この場合の周波数の差は1.5倍(=33/25)となり、音階の差は0.6(=Log2 1.5)オクターブになり、ドレミのドとソの差があります。

ですが、これも仮に2台並べて比べても、判別はかなり難しいと思われます。

となれば、4気筒と8気筒はどうでしょうか?

この場合の周波数の差は2倍(=50/25)で、音階の差は1オクターブですので、2台のクルマを並べて比較すれば違いが分かるかもしれません。

ですが、2台のクルマが離れていたり、回転数が異なっていれば、当然ながら識別するのは困難です。

という訳で、気筒数の差が4気筒程度であれば、同じ回転数の排気音を2台並べて比較すれば、どちらの気筒数が多いか(もしかしたら)分かるかもしれません。

ただし、比較するクルマが離れていたり、アクセルをブンブン吹かしながらの比較でしたら、どちらが気筒数が多いかは誰にも分からないでしょう。


7. 排気音でドレミを奏でる方法


さてここまで分かってくると、だったら排気音でドレミの音階を奏でる事ができるのではないかと思われませんでしょうか?

という訳で、早速作ってみました。

下の表は、4気筒と6気筒エンジンでドレミを奏でるのに必要な回転数とそのときの排気音の周波数を示しています。

音階 4気筒 6気筒
周波数 回転数 周波数 回転数
33 Hz 1000 rpm 50 Hz 1000 rpm
黒鍵盤 35 Hz 1059 rpm 53 Hz 1059 rpm
37 Hz 1122 rpm 56 Hz 1122 rpm
黒鍵盤 40 Hz 1189 rpm 59 Hz 1189 rpm
42 Hz 1260 rpm 63 Hz 1260 rpm
ファ 44 Hz 1335 rpm 67 Hz 1335 rpm
黒鍵盤 47 Hz 1414 rpm 71 Hz 1414 rpm
50 Hz 1498 rpm 75 Hz 1498 rpm
黒鍵盤 53 Hz 1587 rpm 79 Hz 1587 rpm
56 Hz 1682 rpm 84 Hz 1682 rpm
黒鍵盤 59 Hz 1782 rpm 89 Hz 1782 rpm
63 Hz 1888 rpm 94 Hz 1888 rpm
67 Hz 2000 rpm 100 Hz 2000 rpm
黒鍵盤 71 Hz 2119 rpm 106 Hz 2119 rpm
75 Hz 2245 rpm 112 Hz 2245 rpm
黒鍵盤 79 Hz 2378 rpm 119 Hz 2378 rpm
84 Hz 2520 rpm 126 Hz 2520 rpm
ファ 89 Hz 2670 rpm 133 Hz 2670 rpm
黒鍵盤 94 Hz 2828 rpm 141 Hz 2828 rpm
100 Hz 2997 rpm 150 Hz 2997 rpm
黒鍵盤 106 Hz 3175 rpm 159 Hz 3175 rpm
112 Hz 3364 rpm 168 Hz 3364 rpm
黒鍵盤 119 Hz 3564 rpm 178 Hz 3564 rpm
126 Hz 3775 rpm 189 Hz 3775 rpm
133 Hz 4000 rpm 200 Hz 4000 rpm
黒鍵盤 141 Hz 4238 rpm 212 Hz 4238 rpm
150 Hz 4490 rpm 224 Hz 4490 rpm
黒鍵盤 159 Hz 4757 rpm 238 Hz 4757 rpm
168 Hz 5040 rpm 252 Hz 5040 rpm
ファ 178 Hz 5339 rpm 267 Hz 5339 rpm
黒鍵盤 189 Hz 5657 rpm 283 Hz 5657 rpm
200 Hz 5993 rpm 300 Hz 5993 rpm
黒鍵盤 212 Hz 6350 rpm 317 Hz 6350 rpm
224 Hz 6727 rpm 336 Hz 6727 rpm
黒鍵盤 238 Hz 7127 rpm 356 Hz 7127 rpm
排気音でドレミを奏でるためのエンジン回転数

ですので、仮に4気筒エンジンでド/レ/ミを奏でるのでしたら、エンジンの回転数を1000回転/1122回転/1260回転にすれば可能になります。

また音階は4気筒より半オクターブほど高くなりますが、6気筒エンジンでも回転数を1000回転/1122回転/1260回転にすればドレミを演奏できます。

ですが実際にやってみると、(クルマが止まった状態でも)エンジンの回転数を足で一定に保つのはかなり難しいですし、ましてや100回転程度の違いで維持するのは相当の練習が必要かもしれません。

注:ピアノの調律においては、220Hzをラにするそうですが、ここでは単純に回転数1000rpmの音をドとしています事、ご容赦願います。


8. まとめ


少々横道に逸れましたが、一気にまとめです。

①エンジンの気筒数が増える、もしくはエンジンの回転数が上がれば、排気音は高くなる。

②同じ回転数の4気筒と6気筒エンジンの排気音の差は、半オクターブ程度であり、2台並べて聴き比べても識別は難しいと思われる。

③また4気筒と8気筒エンジンの排気音の差は1オクターブあるので、2台並べて比べれば識別可能かもしれないが、2台が離れていたり、少しでも回転数が異なれば、識別不能である。


④概して言えば、エンジンの排気音を聴いて気筒数を当てる事はほぼ不可能と言える。


⑤ただし8気筒以上のエンジンを高回転(6000回転以上に)させれば、6気筒以下のエンジンでは再現できない400Hz以上の甲高い音(上図の赤丸部分)が出るので、多気筒エンジンかどうかの判別は可能である。

ちなみに、冒頭にご紹介した気筒数が多くなれば排気音が高くなるとのご指摘を頂いた方は、何とイタリア製のV8エンジン搭載車に乗られているとの事ですので、この辺を落とし所として大きな間違いではない様に思います。

そして最後に一言。

⑥今どきデジタル処理を使えば、排気音や犬の鳴き声で音楽を演奏する事は簡単にできるが、色々なクルマの生の排気音を集めて音楽を奏でれば、もしかしたらヒットするかもしれない。

と思い、前述のドレミと回転数の表を3オクターブ近くまで作っておきました。

本書がお役に立てば幸いです。




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