小学生でも分かる
ホイールアライメントの話

2015/04: 初版

目次






4. キャスター角の効果


さて、最初はキャスター角です。

キャスター角とは前輪の操舵回転の中心軸と垂直線との傾きを指します。

クルマですと少々難しい言い回しになりますが、バイクや自転車で言えばフロントフォークの傾きになります。

前輪にキャスター角が付いていると、直進性能が向上すると言うのは広く知られている話です。

前記した通り、自転車やバイクの前輪にも付いています。

ですが、何故前輪にキャスター角が付いていると直進性能が良くなるのか、その理由を明快に説明できる方は少ないのではないでしょうか?

実際、本やネットで調べても以下の様な事が書かれていますが、今一つ良く分かりません。

①キャスター角があると直進時にタイヤ下部(地面との接点)が後ろに引っ張られる。

②転舵時のキャスターなどによって、タイヤの持ち上げトルクが大きくなるため。

③キャスター角があると、キャスタートレイルが大きくなるため。

となったら、自分で書くしかありません。


1)キャスター角が付いているとなぜ直進性能が良くなるのか?


すっかり前置きが長くなってしまいましたが、その理由は非常に簡単です。

下の絵をご覧下さい。


絵を簡単にするために自転車を例にしていますが、前輪にキャスター角が付いている事により、ハンドルの回転軸(黒の一点鎖線)と接地面(青い波線と地面が交わる個所)にずれが生じます。

また走行中は、タイヤが地面と擦れる事により、タイヤの接地面に赤い矢印の力が生じます。

この二つがミソなのですが、上の絵をいつまでも眺めていても、決して直進性が良くなる答えは見つかりません。

ところが、黄色の矢印の方向から前輪を眺めると、その答えが見えてきます。


上の絵は、黄色の矢印方向から前輪を見た絵です。

左側が直進状態、右側がタイヤ(ハンドル)が左に向いた状態です。

これでひらめいて、頂けましたでしょうか?

先ず左側の絵ですが、直進時には赤い力はタイヤの抵抗となる以外何もしていません。

ところが右側の絵の様に、タイヤが少しでも左を向くと、赤い力によりタイヤを右に回転させて真っすぐに戻そうとする回転モーメント(緑の矢印)が生じるのです。

この緑の力(タイヤの向きを元に戻そうとする力)は、力学的には以下の場合に大きくなります。

①加速中でタイヤからの抵抗(赤い矢印)が大きいとき

②キャスター角が大きい(フロントフォークが寝ている)とき

③タイヤ(ハンドル)の曲げ角度が大きいとき

このため(昔憧れた)下の写真の様なフロントフォークを延ばしたバイクは、直進安定性はすこぶる良いという事になります。


70年にヒットしたイージー・ライダーの一場面

ただし背もたれがあるとは言え、上体を起こした状態での2輪車での高速走行は、重心が高いのと風の影響をまともに受けるので、かなり恐いものがあります。

さらにフロント角を大きくした弊害として、曲がり難いという弊害も発生します。



キャスター角の傾向


話をクルマに戻すと、FF車の場合、その駆動方式から元々直進性が良いので、FR車よりキャスター角を小さくする傾向があります。

またFR車の中でも、フェアレディーZの様な高速クルージング向きの車両は、キャスター角を大きめに設定されています。

   
フェアレディーZのキャスター角は8度

さらに最近の傾向として、低燃費タイヤを標準としているクルマの場合、路面からの抵抗が少ないため、キャスター角度を大きくする場合があります。

またバイクに飛んでしまいますが、ハーレーダビッドソンで唯一の水冷エンジンを搭載したV-RODも、キャスター角を従来の34度から38度に変更してより高速クルージング向けとしています。


これでキャスター角の効果を分かって頂けましたでしょうか?


キャスター角の特徴


上記を表にまとめると、以下の通りです。

項目 キャスター角
特徴 直進性能が悪い
曲がり易い
最小回転半径が小さい
直進性能が良い
曲がり難い
最小回転半径が大きい
FF車
スポーツカー
高速クルージングタイプ車
低燃費タイヤ標準車

またこれを一言でまとめると以下の通りです。

キャスター角が大きいとタイヤの向きを元に戻す力が発生し、直進性能が良くなる。


キャスター角のもう一つの効用


ところで、キャスター角を付けるもう一つの理由があります。

例えばですが、台車についているキャスターの場合、キャスター角は付いていませんが、キャスタートレイルがあるので直進性能は確保されます。

   

ですがこの場合、路面に段差があるとその衝撃がそのまま台車全体に伝わります。

一方ショックアブソーバーのあるクルマの場合、前傾したキャスター角を付けることにより、その衝撃をショックアブソーバーで吸収してくれるというメリットがあるのです。


例えば上の図の様に、前輪が障害物にぶつかって、前輪の軸に赤い矢印の衝撃が加わったとします。

このとき、左の図の様にキャスター角が前傾していれば、ショックアブソーバで吸収される青の力が大きくなり、右の図より緑の力が弱まっています。

これによって、車体に加わる衝撃が弱るという訳です。

と、通常でしたキャスターの話はここで終わりでしょう。

ですが本書は違います。

次に、全く知られていませんが、キャスター角が全く効かない場合がある事をお伝えしたいと思います。

例えばですが、ペダルを漕がないで自転車で手放し運転はできるでしょうか?





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